レッドオーシャンで見つけたブルーホール⑤
第五話 月間利益1100万円
2013年1月1日、待ちに待った信用取引の規制緩和が始まり、株式相場も活況になっていく。いわゆるアベノミクスのはじまりである。ただ、僕の株取引の結果はというと、1月が41,836円、2月が11,997円と少ない利益で終わった。ブログを見てもらえれば分かるが、証券ディーラーとして売買していたちっぽけな過去の経験が邪魔をしていた。株価がこんな上がるはずがない、上がりすぎだ、いつか急落が来るはずだ。ひたすら逆張りに逆張りを重ねたトレードしていたので利益を伸ばせずにいた。
このままじゃ最初に決めた1年で500万円を稼ぐ目標には到底届かない。11月、12月、1月、2月と4カ月が過ぎてもまだ50万円ほどしか稼げずに、残り8カ月で450万円稼げなければ、当初決めていた株取引を諦めて転職せざるを得なくなる。せっかく入った証券会社を辞めてデイトレーダーになったのに、結果も残せず何をしているんだ・・・。焦りからくる空しさや、悲しさが押し寄せ、人生って何だろう、と落ち込む日々が続いた。
「自分が選んだデイトレーダーという道をもう一度突き詰めよう」と自分に言い聞かせ、今までの取引を見直すことにした。ブログを始めた当初から読み返し、何でやられているのか、今の相場と何が噛み合っていないのかを徹底的に分析した。
「上がりすぎ、下がりすぎなんて自分のちっぽけな過去の経験から判断するのは止めよう!」相場全体の強さに逆らわず、波に乗る。流れと同じ方向で攻めていく姿勢に変えると決めた。アベノミクスというイケイケな相場だったので、逆らわずに順張り投資にスタイルを変えた結果、3月は手数料、金利、税引き後の手取り利益として1,265,967円を手にした。ひと月で100万円という大金を稼ぐことに成功したのだ。この頃には画面上の数字がお金として認識せずに「ただの数字」として考えられるようになっていた。デイトレードで1日3万円やられた日には「何日分のバイト代だよ・・・」と落ち込んでいたのだが、数字の積み重ねと考えれば、1万円や2万円や10万円はただの数字で、10万円勝てば+10、3万円負ければ-3トータルで+7という風に考えられるように変わった。これにより感情が入らなくなるので、機械的に「数字を積み重ねる作業」としてトレードが出来るようになった。株取引に感情が入るから、下がった株は塩漬けにし、上がった株はすぐ利確するという一番典型的な負けパターンになってしまうのだ。4月は6,638,597円という利益を叩き出した。当初設定していた、1年目で500万円稼げなければ転職するという目標を4月の月間利益だけで達成でき、次はどこまで伸ばせるかという楽しみもできた。この時も相変わらず夜は週6ペースで総大醤でのバイトを続けていた。偶然なのかもしれないが、バイトでトイレ掃除を頑張った次の日は、必ずトレードが勝てるというジンクスが生まれた。こればかりは何故か分からないしたまたまかもしれないが、「トイレの神様はいるんだ!」とジンクスができることで少し気も楽になった。
5月になってからも順張りで攻め続けた。この頃毎日極度の緊張感のあるトレードをしており、自分の身の丈に合ったロットでなかったために、マウスを握る手はびっしょりと濡れ、更に言えば尋常ではないくらいの脇汗もかいていた。信用取引というレバレッジを効かせた取引により何千万円というお金で勝負をした結果、5月は手数料、金利、税引き後の手取り利益として11,278,013円となり初めて月間1100万円という大金を稼げるようになった。この時のトレードは自分でもアドレナリンが凄く出ていたのが分かった。そして、なによりも楽しかった。この月、当初より毎日続けていたブログが月間PV数100万PVを達成し、ブログランキングでも上位に入ってくるほどに成長した。
6月のトレードでも鵜用曲折ありながら(詳しくはヤーマンの株日記で)2,883,555円の利益を出し、イケイケだった僕は、高級時計を購入することを決意する。その時までは株取引でいくら稼ごうが数字上の話で、実際に自分が株で稼いだお金を見ることがなかった。証券口座から初めて引き出した200万円もの大金を見たときに怖くなったことを、その大金を握りしめロレックスのデイトナを震えながら買ったあの時のことを、今でも鮮明に覚えている。
7月、念願のロレックスを手に入れイケイケに磨きのかかった僕は、完全に調子に乗っていた。初心を忘れ、こんなに下がるはずがない、と決めつけたトレードで自分の失敗、敗北を認められずナンピンをしてしまい、迅速な損切りができなかった結果、約950万円マイナスというとんでもない大やられをすることになった。
このままでは5月の1100万円の利益が水の泡になってしまうと我に返り、オリバー・ベレス (著)の「デイトレード」という本(日経BPより2002年に出版された、僕のトレードの教科書)を読み直し、自分のスタイルを取り戻したおかげで、なんとか7月もプラスに返り咲くことができ、2,266,251円の利益を出すことができた。
この月に初めて、ブログで参加者を募り「ヤーマンオフ会」という投資家が集まる飲み会を開催した。初めてのオフ会は45名もの参加者が集まり、賑やかで楽しいイベントとなった。ここから幹事としてイベントを企画する楽しさや大変さを知った。第二回のヤーマンオフ会は135名もの参加者が集まり、毎年3,4回のオフ会を開催して投資家同士の繋がりを積極的に作ることもライフワークの一つになった。東京で開いた350名オフ会は今までを通して最高人数となり流石に疲れたけれども、テレビ番組もその様子を取材するほどの盛況ぶりだった。こうやって開いたオフ会でのリアルな繋がりが今でも続いているので、本当に開催してよかったと思う。
手数料、金利、税引き後の手取りの利益として、2013年8月325,964円、9月2,398,415円を出したが、逆に10月は7日~11日の間で2,953,643円と大きく負けるが、最終54,044円と利益を出していくうちに、このまま個人投資家でいいのかという感情が僕の中で芽生え始めていった。